「ご予約はお電話で」のお店が、静かに逃しているもの。
夜の10時。明日の午後に時間ができたから、髪を切りたい。そう思って近くのお店を調べた人がいるとします。感じのいいお店が見つかりました。料金も載っている。よし、ここにしよう——と、予約方法の欄を見ると、こうあります。「ご予約はお電話で」。
夜の10時です。電話をかけるには、遅すぎます。「明日の朝かけよう」と思ったその人は、朝になると仕事が始まり、昼休みに思い出したときには、検索結果の隣に「24時間ネット予約OK」のお店が並んでいます。
電話は、かける側の負担が大きい
先に書いておくと、電話は良い道具です。声が聞ける。細かい相談ができる。常連さんとの関係を電話が支えているお店も、たくさんあります。問題は、電話「しか」ない状態のほうです。
かける側から見ると、電話には結構な段差があります。営業時間内にしかかけられない。自分の仕事中もかけられない。それに、知らない相手に電話をかけること自体が苦手な人も、若い世代を中心に増えていると言われます。受ける側にも段差はあります。施術中、接客中、仕込み中の電話は、目の前のお客さまを待たせて取ることになります。電話だけの受付は、両側に我慢を強いる仕組みになりがちです。
電話を残したまま、窓口をひとつ足す
だからといって、「電話をやめてネット予約に切り替えましょう」という話ではありません。電話はそのまま残して、電話のできない時間帯・できない人のための窓口をひとつ足す。それだけで、夜10時のあの人は、隣のお店へ行かずに済みます。
足す窓口は、大がかりなものでなくて構いません。
- 予約フォームを一枚。お名前と連絡先と希望日時。三つ聞くだけの素朴なフォームでも、「夜でも送れる」が生まれます。お返事は翌朝、お店のペースで構いません。
- LINE公式アカウント。お客さまの側に新しい道具が要らないのが強みです。友だち追加から予約の相談ができるだけで、電話の段差はだいぶ低くなります。
- 予約帳のクラウド化。紙の帳面をクラウドの表に置き換えると、フォームやLINEで受けた申し込みの行き先がひとつにまとまり、二重に入れてしまう心配が減ります。
「電話で埋まっているから大丈夫」の見えない穴
「うちは電話で十分埋まっているよ」というお店も、あると思います。それはたぶん本当です。ただ、電話で埋まった予約帳には、電話をあきらめた人が写っていません。夜に調べて隣のお店へ行った人は、数字のどこにも出てこない。見えないから、いないことになっている——機会損失というのは、たいていそういう静かな顔をしています。
窓口は、増やすほど偉いわけでもない
最後にひとつだけ。窓口を増やしすぎて、どれも見きれなくなるのは本末転倒です。電話と、もうひとつ。まずはそのくらいが、小さなお店にはちょうどいいと思います。その「もうひとつ」をどれにするかは、お店の商売と、お客さまの顔ぶれで変わります。
「うちなら、どれだろう」。そこから一緒に考えるのが、うちの係の仕事です。