「AIで作りました」は、安心材料か、不安材料か。——発注前に聞きたい3つの質問
見積もりの席で、制作者がこう言ったとします。「うちは AI を活用しています」。
さて、どう感じるでしょうか。「早くて安いなら助かる」という期待が半分。「それって、手抜きじゃないのか」という不安が半分。——それが、ふつうの感覚だと思います。
わたしは AI を使って作る側の人間です。だからこそ今日は、売り込みではなく、発注する側が損をしないためのチェックの話を書きます。
不安の正体は、3つにほどけます
「AI と聞くと、なんとなく不安」。その「なんとなく」を分解すると、たいてい次の3つに行き着きます。
ひとつ、手抜きの不安。ボタンひとつで出てきたものに、お金を払わされるのではないか。
ふたつ、品質の不安。AI は間違えるらしいが、間違いがそのまま納品されないか。
みっつ、情報の不安。相談で渡した売上や顧客の話が、AI の学習とやらに使われないか。
3つとも、まっとうな心配です。そして大事なことを先に言うと——この3つはどれも、「AI を使うかどうか」では決まりません。
道具の話ではなく、責任の話
AI を使っても、ひどいものを納める制作者はいます。AI を使わずに、ひどいものを納める制作者もいます。逆もまた同じです。
品質を決めるのは、道具ではありません。その道具の出力に、誰が・どこまで責任を持つ体制になっているかです。検品する目があるか。間違いを見つけたとき、誰が直すのか。「AI がやったので」と言わない覚悟があるか。
つまり、確かめるべきは「AI を使っているか」ではなく、「使い方を語れるか」。そのための質問が、次の3つです。
発注前に聞きたい、3つの質問
- 「何を AI に任せて、何を人がやっていますか?」——良い制作者は、これに即答できます。自分の工程が分かっているからです。「全部 AI です」も「AI は使っていません」も答えにはなりますが、いちばん危ないのは、ここで答えが濁ること。工程を語れない相手は、直しの局面でも語れません。
- 「うちの情報は、AI にどう扱われますか?」——聞きたいのは難しい仕組みではなく、運用です。「学習に提供しない設定にしている」「機密はそもそも入力しない」「外に出せない情報は先に決めておく」。この3点をふだんの言葉で説明できるなら、情報の扱いを考えている相手です。
- 「最終責任者は、誰ですか?」——いちばん短くて、いちばん効く質問です。答えが人の名前(またはその会社)なら、大丈夫。「AI が作ったものなので……」という逃げ道を先にふさいでおく。それだけで、納品後のやり取りがまるで変わります。
隠している制作者が、悪いわけではありません
実は、クリエイティブの業界では AI を使っていても公表していない会社が7割にのぼる、という調査があります(出典はスタディページにまとめています)。わたしが出品しているような制作の受発注の場では、公表を義務づけるルールは今のところ一般的ではありません(動画サイトのように、AI 表示を求める場は別にあります)。だから「言っていない=やましい」ではないのです。
分かれ目は、聞いたときの答え方です。聞かれて、ふつうに答えてくれるなら、それで十分。聞かれて、濁す。話題を変える。——わたしなら、その相手には頼みません。制作の中身は、質問への答え方に必ず表れるからです。
わたしの答えは、先に全部書きました
biw.studio は、聞かれる前に答える側に立ちました。何を AI に任せ、何を人がやるのか。情報をどう扱うのか。最終責任者は誰なのか。——「なぜ作家が、AIと組むのか」という1ページに、分業の中身と4つの約束をまとめてあります。
信頼を売る仕事だから、道具を隠さない。それがわたしの結論です。