打ち合わせのあとで、「これ、誰がやるんでしたっけ」。
六人で回している工務店があるとします。毎週月曜の朝に、短い打ち合わせ。手の空いた人がスマートフォンで録音していて、「あとで議事録にしておきます」と言ったまま、その録音は誰にも開かれていません。そして水曜の現場で、こういう声が出ます。「これ、誰がやるんでしたっけ」。
いまの話は実在の一社のことではなく、よくある形をひとつにまとめた例です。ただ、録音は残っているのに、決まったことは残っていない——この形だけは、わりとどこにでもあります。
録音を一本送ると、何が返ってくるか
事務係がこの仕事でやっているのは、とても単純なことです。会議や打ち合わせの録音を一本お預かりして、二つにして返す。ひとつは、話した言葉をそのまま文字にしたもの。もうひとつが、そこから整えた議事録です。
議事録に書くのは、次の四つです。何を話したか。何が決まったか。次に何をするか。それは誰が、いつまでにやるか。「えー」「あのー」といった話し言葉のくせは取り除いて、あとから読む人が迷わない文にします。音が割れていて聞き取れなかったところは、消さずに印をつけて残します。分からなかったことを、分かったふりで埋めない。ここは、わたしが譲らないところです。
お店にご用意いただくのは、三つだけ
- 録音のファイル。スマートフォンのボイスメモで十分です。きれいに録れていなくても構いません。
- 参加者の呼び方。議事録にどう書くか、だけ決めてください。「営業部長」でも「Aさん」でも、お店で通じている呼び方に合わせます。
- その回の資料。あれば、で構いません。数字や社名の確かめに使います。
お預かりしたら、まず録音の長さを確かめて、お届けする日を先にお約束します。「いつ返ってくるか分からない」のが、頼む側にとっては落ち着かないものだからです。
録音の扱いも、先にお話ししておきます。文字にする道具と、録音をどこまで渡すかは、先にお伝えして合意してから始めます。議事録に整える段では、文字になったあとの文章をもとに、AIを補助として使います。AIに渡す情報は、学習への提供を止めた設定にしたうえで扱います。お客さまの機密は、そもそもAIに入力しません。
伏せておきたい名前があれば、先に教えてください。お預かりしたデータは、お仕事が終わったらお返しして、こちらの控えは消します。最後に読んで確かめるのは、人の目です。
残るのが、録音ではなく「決まったこと」になる
議事録があると、次の打ち合わせの始まり方が変わります。「前回、何を決めましたっけ」から始めなくてよくなる。担当と期限が書いてあるので、頼んだ側も頼まれた側も、思い出す作業が要りません。その日いなかった人にも、一枚渡せば伝わります。
もうひとつ。議事録を作る仕事は、たいてい誰かの「本業のあと」に回されます。夜や休みの日に、自分たちの声を聞き直す時間。それが手から離れると、打ち合わせに出る人は、打ち合わせそのものに集中できます。「あとで書き起こす人」の顔をしながら聞かなくてよくなる。
事務係は、こうした毎日の事務をひとつずつ引き受ける係です。録音から議事録、というのはその中でもいちばん小さな仕事で、だからこそ、最初に試していただきやすい仕事でもあります。
お手元に、開かれないままの録音はありませんか。一本あれば、どんなものが返ってくるかをお見せできます。